食事の準備・配膳
必要な機器を一つずつ最適化。厨房での調理とお運びを、もっとスムーズに
旅館あけぼの
佐賀県佐賀市
インタビュー
- 課題
- 調理場のスペースと既存機器との兼ね合いから
厨房全体の作業が非効率な状態だった
- 改善
- 作業工程に合わせて機器を一部新調。
配置も考えなおし、厨房の業務を効率化
- 導入ソリューション
- 冷凍庫、舟形シンク、吊戸棚、キューブアイスメーカー、自動ドア ほか
-
実施年度
2025年度
-
施設名
旅館あけぼの
-
エリア
佐賀県佐賀市中の小路3-10
-
施設概要
1889年創業、客室:27室
-
URL
-
資料ダウンロード
本事業をどのようにして知りましたか
毎年、観光庁が実施されている補助事業には以前から注目しており、秋頃に公表される補正予算案などを見ながら情報収集をしていました。人材不足に関する事業が出てくるのではないかと考えていたんです。
厨房については以前から、日々の業務の中で細かな不便さを感じてはいました。ただ、それらは一つひとつが小さな課題でもあり、優先順位としてはお客さまの目に触れる部分を先に整えてきました。そのため、厨房の環境整備については「必要に応じて、少しずつ改善していこう」と考えていました。

「佐賀の良さも伝えたい」と明るく語る音成亜美さん。1889年創業の宿を、5代目として受け継ぎました。
厨房に関して、どのような課題がありましたか
最も感じていたのは、本来不要な動きが多いことでした。
仕込みや調理、お運び、食器洗いなど、多くの業務が同時に進行しますが、必ずしもスムーズな作業環境にはなっておらず、気をつけていてもスタッフ同士がぶつかってしまったり、盛り付けスペースが足りずに場所を移動しながら作業したりと、細かな負担が日常的に発生していました。
動線の制約によって、本来は必要のない動きが増えると、それだけで無駄な作業になりますし、各セクションが譲り合いながら進める働き方は、どうしてもストレスにもなります。これまでと同じ人数を前提にした体制を続けていくのは、難しいと感じていました。
また事業者の立場として、本来作業を行うべき場所以外で業務を行うことには、衛生面での不安も少なからずありました。こうした細かな積み重ねを、一つずつ解消する必要があると感じました。

申請を決めた理由を教えてください
公募要領を読んだ当初は、正直なところ「新しい機器は、もう買い足さなくてもいいな」と思っていました。これまでにも、厚生労働省の業務改善助成金や、地元・佐賀県の補助金などを活用して、スチームコンベクションオーブンやロボット掃除機をはじめ、業務を自動化できる機器はひと通り、導入してきたからです。
しかし改めて現場を見つめ直すと、業務を自動化することよりも「あと一歩」の改善が積み重なっていることに気づきました。氷の供給量や食器の収納、作業台のサイズなど、一つひとつは小さなことですが、それらが日々の負担になっていました。
そこで今回は、業務の効率化の課題に対応する物品を一つずつ整理して導入すれば、省人化に資する取り組みになるのではないかと考えたのです。
お付き合いのある中小企業診断士の先生にも相談して、背中を押していただきました。
どのように計画を練っていかれましたか
自分自身が厨房に入って作業する中で、「本来やらなくていい動き」や「無駄になっている部分」を、一つひとつリストに書き出していきました。
たとえば、キューブアイスメーカーの容量が足りず夏場は氷を買いに行かなければならなかったことや、盛り付けのたびに厨房の外に器を取りに行く必要があること、両手がふさがった配膳時にドアを開けづらい点などです。リストアップすると、「こんなにあったのか」と思うほど、細かな非効率が積み重なっていました。
女将である母にも、事業計画についてはその都度相談しました。食器の収納についても、親子でたくさん話し合いましたね。長年続いてきた旅館ですので、食器や備品の量がとにかく多いんです。 母の助言どおり、新設した棚に入りきらない食器もやはり出てきました(笑)。その点については、今回の補助事業とは別の経費で棚を買い足して、対応しました。

女将の洋子さんと、現在代表を務める娘の亜美さん。先代の意志を大切にして運営されています。
厨房全体を見直して、さまざまな箇所を改善されましたね
はい、例えば収納に関して、器や調理器具があちこちに分散していても、長く勤めてくださっているスタッフが暗黙知してくれていたんです。ただ、近年は高齢スタッフの働き方も変わりつつあり、新しく入ったスタッフにとっては作業を覚えていただくことが多く、動きづらい環境だったかもしれません。
私は2022年まで東京で別の業界に従事していましたが、コロナ禍をきっかけに佐賀へ戻ってきました。
旅館を継ぐにあたって、現場での業務内容を身体で理解したいという思いも強く、盛り付けや皿洗いなどを時折手伝うこともありました。食べることも大好きですし、料理長と一緒にいろいろな取組みを行っていましたが、そうやって現場に立つ中で、「ここにスペースがあれば、もっと動きやすいのに」「毎日使うこの機器は、数を増やしていいのでは」といった、小さな疑問が次々と浮かんでいました。
2023年4月に正式に宿を継いだのち、長年支えてくださっているスタッフのためにも、厨房をより効率的にしたいと強く思うようになりました。

導入した冷凍庫により、十分なストックを確保できるように。専門メーカー製で、機能性にも優れています。

スペース不足で効率が悪かった箇所に舟形シンクを導入し、職人さんの作業スペースを確保。

キューブアイスメーカーを大容量タイプに新調し、一度に多くの氷を作れるようになりました。

厨房を横断する吊戸棚を設置し、別室へ取りに行く手間を削減。

扉に器の写真を貼り、ひと目で分かるようにする工夫を加えたそうです。

日常的に使うこだわりの器のために、盛り付けスペースの下にもたっぷり収納を確保。
改善の中で、特に良かったものはありますか
スタッフから特に反響が大きかったのは、厨房と廊下を隔てる自動ドアの導入です。
以前は、仲居が重たいお盆を持ったままドアを開閉していました。忙しい時間帯には開けっぱなしになることもあり、「閉めましょう」と声を掛け合うこと自体が、小さな負担になっていたと思います。
自動ドアに変えたことで、無駄な動きや気遣いが不要になりました。単体での導入ですが、想像以上に効果を実感しています。

省人化に資する効果はどの程度ありましたか
体感ではありますが、作業時間や身体的負担は全体で約3割ほど軽減されたと感じています。今シーズンは高齢スタッフの卒業もあり、以前より2名少ない体制ですが、通常通り運営できています。
冷凍庫や収納棚の整備によって探す時間が減り、自動ドアによって配膳がスムーズになり、それぞれの改善が積み重なった結果だと思います。より落ち着いて、気持ちよく仕事ができるようになりましたし、機器を見直したことで、ゆとりのスペースも生まれました。料理人は調理に、仲居は配膳やお運びに…と、それぞれの役割により集中できています。
また、物の位置が明確になったことで、新しいスタッフへの説明も簡潔になりました。
最後に、本事業全体を通してのご感想を教えてください
今回の事業は、厨房の現場で感じていた「小さな不便」を一つひとつ解消していく積み重ねでした。その結果、無理のない動きができる環境が整って、気持ちにも余裕が生まれています。
私たちの経営理念である「お客さまの心を豊かにする」ためにも、まず働く私たち自身が安心して業務に集中できることが大切だと感じました。
勇気のいる決断でしたが、実施して本当に良かったと思っています。

お忙しい中、インタビューのご対応をありがとうございました